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2007年8月11日 (土)

足音

 昨日は超暑かったです。今シーズン最高でした。

 自宅の傍に設置してある温度計が33度をさしていました。たいしたことないだろと言われそうですが、山間部の33度はシーズンに何回もないんです。

 松江と我が家のあたりでは通常、温度が5度違います。松江を東京都心部の温度とすると、自宅のあたりは高尾といったとこでしょうか?昨日の松江はどんだけ暑かったんだろう。

 では前回に続き、少しだけヒンヤリできるかもしれない話を書きます。実際にあったことをなるべく忠実に書いてるんで(一部、忘れてる部分もある)ドラマチックさに欠けるのが難点ですがお付き合いください。

 1987年当時はバブルの創世記で、1日4000円で朝から晩まで休日も無く、テレビもみれず、風呂も滅多に入れない山小屋で働こうなんて若者は少なく、ちょっとした事件を起こした自分をクビにする余裕がオーナーには無かったようです。

 自分が行くように命じられた小屋は、麓の温泉地から歩いて3時間ほどの場所に建つ小屋で、宿泊設備は無く売店のみでした。

 その小屋まで荷物用のケーブルカーが通っているので、営利施設というよりか物資の保管を主目的として建造されたようでした。

 87年当時、物資の運搬はほとんどがヘリコプターによる荷揚げだったんですが、80年頃まではケーブルカーで小屋まであげた荷物を、屈強な山男が担いで各小屋に運んでいたのです。その作業をボッカといい、その後自分も何回か経験しましたがヘビーなものでした。自分が一番嫌だったボッカは水で、20リットルのポリタンを2つ背負子にくくりつけて水不足の山小屋に3時間かけて運びました。運んだそばから使われてアッというまに無くなった水をみて『これがホントの水の泡だな』と実感したものです。

 長老に言わせると40キロ程度のボッカなんて朝飯前だそうです。彼はLPガスのフルサイズのボンベを2本担いだそうです。写真もみました。多分100キロくらいあったと思います。人間技とはおもえませんでした。

 さて、その小屋に配属された自分が命じられた仕事は登山道の整備でした。その登山道は県道かなんかになっていて、整備すると県か町から金がおりるようでした。

 道の整備といっても重機が入れるような場所では無いので、ひたすら人力作業です。大金槌、角材、ワイヤー、スコップなどを4~5人で分担して持って現場に向かいます。

 地面が土の場合は楽なのですが、厄介なのは岩場の修復です。岩場の場合、直径3センチ、長さ2メートルほどの如意棒みたいな鉄の棒でひたすら岩を突いて崩すんです。若い頃だからこそできた激務です。作業効率もへったくれもあったものじゃありません。大雨の中、鉄の棒を一心不乱に岩にぶつけてる仲間の姿は中世の宗教の儀式のようでした。

 そんなある日の朝、体調のすぐれなかった自分は小屋での留守番を命じられました。前日の作業で足をくじいたか風邪でもひいたかしたのでしょう。

 現場に向かう仲間を見送り、小屋をざっと掃除すると久々の自由時間でした。6月の半ばか終わりの頃で登山者もほとんどあがってこない時期です。

 たっぷり昼寝をして好きな昼食を作って食べ、午後は小屋の前にあるベンチに横になって本を読んでいました。

 時刻は2時過ぎくらいだったとおもいます。

 急にあたりが霧に覆われてきました。霧のことを自分たちはガスと言ってました。

 『あ~すげえガスってきたな~』とか言って小屋に入りました。ミルクのように濃厚で5メートル先も判別できないガスでした。

 小屋は平屋建てでした。一階部分が売店コーナーと台所。屋根裏部屋が従業員の宿泊場所で間仕切りなしで30畳ほどの空間でした。屋根裏部屋なので高さがなく中央部分の一番高いとこでも170センチほどだったと思います。トイレと風呂は別棟でした。

 ガスはどんどん濃くなっていくようです。日没みたいに周囲が暗くなってきました。

 そのとき

 頭上の屋根裏部屋から音がするんです。

 ミシッミシッみたいな。ギシッギシッみたいなそんな音です。

 ネズミとか猫が出せる音ではないんです。量感が全く違いました。もっと重量物の生物が奏でてるような音。かといって熊や猪の感じともまた違う・・・。

 結局、どう聞いても人の足音に聞こえるんです。

 でもそこに人がいるはずが無い。少なくても山小屋関係の人が潜んでる可能性はゼロだし、一般の登山者でもそこまで度胸のある侵入者はいないと思う。

 足音のような音は消えない。

 自分は仲間が作業している現場に行こうかなと思ったがやめました。現場まで20分程度、普通の状態ならなんてことない距離ですが、どう考えても異常なこの状況では普段通りにたどり着ける自信がありませんでした。

 頭上の音をききながら自分はジッとしてました。

 どれだけの時間が経ったころでしょうか、ガスがひき足音が止んだのです。10分にも感じたし1時間にも感じられた時間でした。

 夕刻、仲間が小屋に戻ってきました。

 自分は仲間に何も言いませんでした。言ったところで今夜もその屋根裏部屋で寝なくてはいけないのですから。

 仲間の何人かは早速屋根裏部屋にあがって一杯はじめています。

 そのとき自分は気づきました。

 大雪が降るその場所に建てられた小屋は太い梁を幾重にも重ねて頑健に作られてるので、屋根裏部屋を人が歩いたくらいではなんの音も発しないんです。

 じゃあさっきの足音はなんだったんだろう?

 自分は益々背筋が冷たくなりました。

 かつてその小屋のそばに遭難者の遺体(オロクといいます)を安置していたオロク場があったそうです。オロクさんはケーブルカーで麓に送られたと聞いたのはだいぶん後になってからです。

 そのことがあの足音となんらかの関係があったのかは今となっては知る由もありません。

 その後の自分ですが、若い男性故の過ちを犯してしまいます。で、更に移動を命じられ系列の小屋の中でもっとも交通の不便な場所に建つ小屋に行くこととなります。そしてその小屋で最後の不思議な体験、『消えた水筒』にめぐり合うんです。

 その話はまた後日。

 このシリーズ、読んでくれてる人はいるのでしょうか?ちょっと不安になります。よって吾郎とジャムには関係ない話ではありますがコメ欄復活させていただきます。

 ではでは。

 

 

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コメント

ごめんなさい・・・
おかしゃん超超怖がりで、読むと夜中にトイレいけなくなるので・・・
あ、ビール飲むから毎晩行くんです・・・トイレ

投稿: おかしゃん | 2007年8月11日 (土) 12時54分

読んでますよ。そんな怖い体験続きで、逃げ出さないところが、すごいですね。
若い男故の過ちのほうが、気になってしまいました。女がらみか!!?

投稿: はまのはなまま | 2007年8月11日 (土) 15時36分

逃げるに逃げられない状況だと人ってタフなんだな、と思いつつ読ませてもらっています。
山って霊山ていうくらいだから、不思議な体験することあるみたいですね。
都会のもやし君がきこりさんになったと勝手に人様の人生を想像していましたが、そうか、山男さんだったんですね。
納得+失礼致しました。

投稿: kaoru-dubu | 2007年8月11日 (土) 23時49分

 おかしゃん様

 高山も暑いですか?島根は日中はギョッとするほど暑いです。でも吾郎もジャムも食欲旺盛です。笑
 ジジ様の部屋、見ましたよ。囲炉裏ってゆうんですか?自分は実際に使ったことが無いんで憧れてしまいます。魚とか焼きながらお話するんでしょうか。梁が黒光りしててかっこよかったです。

投稿: ケン | 2007年8月12日 (日) 08時43分

 はまのはなまま様

 帰省中でしょうか?よいお休みを・・・。
 途中で帰るって発想は全く無かったですね。根性は人一倍無いほうですが、きっと凄く楽しくて充実した毎日だったんだと思います。未だに続いてる友達もいるし。 
 若い男の過ちといえば女性問題でしょ!!男問題だったら、そっちがホントの怖い話だ!!!
 

 

投稿: ケン | 2007年8月12日 (日) 08時49分

 kaoru-dubu様

 もっとオドロオドロしい話を書いたほうが受けるんでしょうが、現実はこんなもんです。あからさまにスプラッターな状況に陥ったら、自分は間違いなく廃人になったと思います。
 山男。う~ん。確かに海男ではないし、都会より山が落ち着くから山男なのかなぁ。でも山男って臭くて水虫があるイメージがあるからちょっとなぁ・・・。笑

投稿: ケン | 2007年8月12日 (日) 09時00分

いろいろと不思議な経験をされているんですね。
私はありえないトコに火のたまが浮かんでいたぐらいでしょうか。 途中まで行きかけて確認しに行きかけたけど、行っちゃダメって思いやめました。。。

鳥取も昨日は37度だったみたいです。
私は仕事で盆花を21時まで作っていたので外の暑さは分んなかったですけど(笑)

投稿: yai | 2007年8月12日 (日) 16時17分

 yai様

 鳥取も毎日暑いんでしょうね!!そして道路が混んでそう!!
 『しゃんしゃん祭』には行かれなかったんですか?自分的には「クールポコ」を生で見たかったです。笑
 盆花ですか。そういえば以前、「母の日」の頃もお忙しかったですね。たっぷり栄養つけて乗り越えてください!!

投稿: ケン | 2007年8月12日 (日) 17時29分

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